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Digigrid IOS レビュー&導入事例

更新日:2020年2月7日


DiGiGrid IOS導入事例

株式会社スピンソルファ 牧野忠義

2018年2月20日

牧野忠義(株式会社スピンソルファ 代表取締役・作曲家)

■代表作

モンスターハンターシリーズ、ドラゴンズドグマシリーズ、ファイナルファンタジーXV(DLCシリーズ) 他多数

■プロフィール

株式会社カプコンにて「モンスターハンター」「ドラゴンズドグマ」等の作曲家・ミュージックディレクター・エンジニアを務める傍ら、 「狩猟音楽祭」や「Video Game Orchestra」等に出演。

数々の海外レコーディング監修、マルチチャンネルミックスなど作曲のみにとどまらない幅広い実績と視点を武器にハイエンドな楽曲制作をプロデュースしている。

2016年、各ジャンルの実力派メンバーで構成された

「株式会社スピンソルファ」を設立、代表取締役に就任。

■最新作

2018/1/26リリース モンスターハンターワールド 

メインテーマ「星に駆られて」 など

Introduction----------------------------------------------------------------------

2014年にリリースされてその多機能性/拡張性が話題となったDiGiGrid製品。

2018年現在においても導入事例がまだ少なく、

聞いた事はあるけどよくわからん!という方が多いのではないでしょうか。

トピックスが多い製品なのは間違いないのですが

「なんか難しそう」というハードルになっている印象があります。

そこで、今回2ヶ月ほどDiGiGrid IOSを実際の仕事で使ってみて

■「導入メリットと、制作フローの変化」

■「現状の不満、今後の展望」

2点に絞った導入事例をお届けしようと思います。

導入に至った理由は、

・普段お付き合いのあるエンジニア飛澤正人氏が使用されている

・本格的に検証を行ってみて相応のポテンシャルを感じたから

です。

SpinSolfa Studio

  • iMac 5k Retina / Cubase(Main DAW)

  • Mac Book Air / Logic pro X

  • windows10 / VE pro / Studio one 3/ Sound Forge11

各マシンをイーサネットでIOSへ接続 / AuidoIFとして共有し、

SoundGrid Studio経由でパッチングしています。

では早速見ていきましょう。

■「導入メリットと、制作フローの変化」

音質------------------------------------------------------------------------------

過去にMOTU828/mk2/mk3、RME FireFace UFX、AVID HD Omniなどを使ってきましたが、

このDiGiGrid IOSはどれにも負けない解像度と正確性を持ち合わせています。

印象はRMEやAVID HD Omniに近く、高解像度で嫌なクセがありません。

上から下までスッキリとした音ですが、特徴は無く

完全にエンジニア寄りの業務用I/Oという印象です。

サンプリングレートは現状96KHz対応、今後UDで192KHzまで拡張予定との事です。

安定性----------------------------------------------------------------------------

これは業務用としては非常に重要です。

少なくともこの2ヶ月で「?」な事案は全く無く、常に安定して稼働している印象です。

複数マシンがインターフェースを共有するのでどちらかにトラブル(ドライバーや相性問題)が

発生する可能性は常につきまといますが、再起動の必要もないほど快適に動作しています。

LAN接続--------------------------------------------------------------------------

検証時にケーブルが足りない事がわかり、直近の100均に買いに行きました。

カテ5でしたが全く問題なく接続転送できています。

USB、FW、TBなどが断線した時、ストックがない限り作業が止まりますが

LANケーブルは入手もストックも簡単ですし、予算的にも非常に魅力的です。

長さも贅沢に選べますし、遠くにセッティングしたい時も安心感がありますね。

Wavesプラグイン用DSP-------------------------------------------------------

・SoundGridStudioという管理アプリ内にあるStudioRack

・DAW上に挿すStudioRack内に立ち上げたプラグイン

に限り、DSP処理が出来ます。

DAWインサートスロットにStudioRackを立ち上げ、

その中に最大8個のプラグインを挿す仕様です。

セッションデータ内にある全てのStudioRackを

一斉にCPU⇄DSPの切り替えが出来ます。1クリックで可能です。

IOSにはcore i 3 が搭載されているらしく正直微妙だなと思っていましたのですが、フルオケ200トラック位の作曲・ミックスを負荷を意識せず行ってみたところDSP使用率は40%にも達しませんでした。

プラグイン処理のみに特化すればCore i 3でも申し分ないという

設計思想を感じます。

私はuniversalAudio UAD-2を併用していますのでプラグイン類の70~80%が

外部DSP任せとなり、音源類がより多く安定して動作する

大きなメリットを得る事が出来ています。

超低レイテンシー0.8ms-------------------------------------------------------

Kemper経由でギター、ベースなどモニタリングしてみたところ全く遅延や違和感を感じません。

むしろ今までより音の食いつきが早く感じるので、自分の弾き方がAudioIF固有レイテンシーに対して自動補正を掛けていた可能性に気付きます。

SoundGridStudioにはeMotionというミキサーが備わっていて、ここを経由することでSoundGridStudio内に立ち上げたwavesプラグインを掛け録りする事が出来ます。

また、StudioRackに立ち上がっているプラグインは処理負荷値のみならず、

レイテンシー値を可視化してくれます。これは実はとても有り難い機能です。

SSL Gchanelで1sample、通常使うAPIやSSLのコンプ・EQなどはゼロレイテンシーである事がわかります。

これはプラグイン選定に大きく影響するでしょう。

先ほどeMotionで掛け録りができると書きましたが

SoundGridStudio内で分岐してダイレクト音、掛け録り音を別々にDAWに録っていく事も出来ます。

Kemperからの入力はXLRケーブル一本です。

この様にeMotionを介さず、ダイレクトに音をやり取りする事が出来る

Device to Deviceというルーティングが存在していて、それを用いる事で

従来のAudioIFでは不可能だったルーティングが可能になっています。

このあたり、ちょっとややこしいのでまとめると

・大元のSoundGridStudioというアプリがあり、

・eMotion(MixerとStudiorack)が備わっていて、

・独立してDevice to Deviceというルーティング機能がある。というイメージです。

この仕組みを理解するのに何度か頭が沸騰しました。

決してわかりやすいものではありませんが、ある程度複雑なルーティング経験がある人は

マニュアルとにらめっこするほどでもないという印象です。

インプットモード--------------------------------------------------------------

DAWマスターチャンネルにはレイテンシーが発生するプラグイン(LMB系やL3-16など)を掛けるので、

今まではギター録り用に2mixをバウンスして新規セッションを立ち上げて録って戻すという手間があったのですが、これを解決するのがインプットモードでした。

*マスターアウトにLMBを挿してレイテンシーを発生させています。

マスターに送られるプレイバックモード

マスターに送られないインプットモード

プレイバックモードではKemperからの入力はStudioRackを経由してマスターアウトに送られ、

LMBによるレイテンシーでまともに弾けない状態になりますが、

インプットモードONにするとプラグインは掛かったままマスターアウトには送らずに

モニタリングが出来ます。

最終段でレイテンシーが発生していても一切の影響なく演奏をやり直す事が出来るのは

圧倒的に効率的です。

複数マシンの接続 /外部DSPの拡張 ------------------------------------------

eMotionとDevice to Deviceのルーティングを用いて、複数マシンで一台のIOSを共有する事が出来ます。

ルーティング図をご覧ください。

物理ルーティングはめちゃくちゃシンプルで

各マシンからLANで接続し、SPL/SMC経由でスピーカーに送っているだけです。

全てのマシンの1-2chはeMotionに立ち上げてMAIN(L/R)から同時出力するだけで

全てのマシンが1セットのスピーカーから再生されます。

また、この応用でサミングアンプとして常用しているUA4-710dに加え、

MBAに立ち上げたLogic pro Xを外部アウトボード的に使用する事も出来る様になりました。

画像ではDevice to Deviceで両DAWを直結し(正確にはCoreAudioのチャンネル同士を結び)

Cubaseの任意トラックからLogic pro XのScapeDesignerにセンドしています。

これはほんの一例ですが、

「ルーティングの自由度を得る」=「従来のAudioIFでは考え付かなかったアイデア」

に繋がります。

DAW専用の優秀なプラグインを統合して使えることで、

メインDAWの選択肢は益々広がるのではないでしょうか。

さらにはOSXのAudioMidi、rtpMIDIなどを併用すれば

CubaseからLogic pro X、Studio one 3などのシンセを鳴らすことも可能ではないかと思います。

また、気軽に波形化したい時はwindowsのSoundForgeやStudioOne3に

ダイレクトに録っていきます。

DAWバウンスと異なるのは、バウンス時にのみ発生する音の欠損や音質変化を気にしなくて良い事です。

サラウンドの場合、各チャンネルの振れ方を実際の波形で見て最終判断する事もあり、

ピンポイントで波形化出来るメリットは大きいです。

また、ゲーム開発やwwiseなどのサウンドミドルウェアは基本windowsで行われる事が多く、

マシン間のリファレンス(0dbで出した信号を0dbで誤差なく受け取る、など)を

取りきるのが難しい場合もあります。

IOSは完全に一台のI/Oを共有しているだけなので、

その誤差や調整を全く気にする必要がありません。

作曲はMac、開発はWndowsというゲームクリエイターにとって

IOSの導入によって Mac / windowsをより高いレベルで統合出来る可能性を感じています。

■「現状の不満、今後の展望」

アイデア次第でもっとポテンシャルを引き出す事が出来るであろう製品ですが、

導入してから気付いた欠点や不満もあります。そのいくつかをご紹介します。

・全てのwavesプラグインが対応していない

L3-16や360シリーズなど、StudioRack非対応のプラグインがあります。

公式にはしっかりリストアップされていたのですが、

叶うならば全てのwavesプラグインが対応していて欲しかったところです。

対応リスト

https://www.waves.com/support/tech-specs/supported-platforms

・本体ノイズが出る

AudioIFの顔をしたDSP搭載マシンなので、IOS本体からファンノイズが発生します。

シビアな環境では対策が必要でしょう。

LANケーブルは引き回しが容易いので遠くに隔離する事も難しい事ではないと思います。

・オンラインバウンスを強要される

ステムやパラデータを作る時などにかなり痛い欠点ですが、

1トラックでもStudioRackを使っている=外部アウトボードを使用している

という認識になるらしく、DSP / CPUでの処理を問わずオンラインバウンスを強要されます。

ただし、弊社の環境(MacOS Sierra + Cubase9.5)にての事例であり

CPUベースに切り替える事で正しくオフラインバウンスが可能、との報告を頂いておりますので

現在調査中となっております。

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最後に、本製品を一緒に検証したエンジニア岡本和憲氏より

コメントを頂きましたので参考にしてください。

岡本です。最初に言いますと今回牧野さんと御一緒させて頂くまで、

DiGiGrid IOSについては詳しく知りませんでした。

DiGiGrid製品がエンジニアに普及しない理由としては、ProtoolsHD → Avid製 i/o という 図式が長年定着している為でしょう。しかし、DiGiGrid製品はその図式を簡単に覆すポテンシャルを持っています。

DiGiGrid IOS は、様々な役割を担うことが可能で、

・『DSPサーバー』

・『ネットワーク機能』

・『Audio IF』

・『ヘッドアンプ』

・『エフェクター』

・『デジタルミキサー』

などと多岐に渡ります。

これからの時代、

「低価格」「高品質」を求められる時代です。

DiGiGrid IOS は

通常のレコーディングの他、ライブレコーディング、ポストプロダクション、プリプロダクション、などの様々なシーンで効果が期待できる、

低価格かつ高品質な利便性のある All In One 製品でしょう。

牧野さんのような、マルチなクリエーターの方にとっては、

DiGiGrid IOS は心強い製品となることは間違い無いですね。

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岡本和憲

SoundCity Studio にてキャリアをスタート。

メインエンジニアとしてアーティスト、ドラマ、映画、ゲーム、CMなど

ジャンルを問わず数々の作品を手掛ける。

また、最近では韓国映画「密偵」にもエンジニアとして参加し、

レコーディングとミキシングを担当。

韓国映画評論家協会賞で音楽賞を受賞するなど、高評価を得ている。

【作品に求められるモノ】を意識した多彩なエンジニアリングを得意とし、

サラウンドミックスにも精通しており、立体感を意識したミキシングにも定評がある。2017年からフリーランスエンジニアとして活動。

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いかがでしたでしょうか?

IOSを中核とした大規模なシステムを組むことももちろん可能ですが、

私の様に複数台マシンを常用していて、自分でもレコーディングやミキシングまで

一貫して行うタイプのコンポーザーにおいてもベストな選択になる様な気がします。

音が良い、安定している、というのはこの価格帯ではもはや当然のことであって、

そこにどんな付加価値があるか?が製品の魅力になります。

DiGiGrid IOSを複数マシンで共有する事で余計な出費を削り、

物理ルーティングはシンプルにしながらも、実際の自由度は大幅に増える。

これがDiGiGrid IOSの最大のメリットであり、

システムの中核を担うポテンシャルを持つ理由と感じています。

この記事を見て、興味を持った方がいらっしゃったら

ぜひディーラーを訪ねて説明を受けてみてくださいね。

多くの方に本製品の魅力が伝わることを願っています。

株式会社スピンソルファ 牧野忠義


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